さけ、時々、めし

日本酒、音楽、人文科学ラヴァーズ

希少価値こそが甘露か

何かしらマスメディアで取り上げられると今まで見向きもされなかったものに人が集まる、というのはよくあることで、始まったことじゃないけど加熱した人気によりずっと贔屓にしていた人が不遇を囲うことになるのはかわいそうだよな、と思う。

日本酒では今現在最もよくわからないレベルのプレミアムがついているのは14代でまあ間違いなく、定価で買うことはほぼ不可能。長く取り扱ってきた特約店の常連になって抽選でもしない限りまず手に入らない。

確かにうまいと思う。上品なボディ感、くどくない甘み、余韻を引く飲み下した際の香り。どれもかなりの高レベルではあるけど、楽天とかで定価+2万円とかで売っているのを見ると、それってどーいうことだよ、と思うし、それだけ出しても買いたい人がいるのかよ、って驚く。そんなに14代じゃなきゃダメなの?他にもうまい酒あるじゃん。

うまいからといって、全国津々浦々の酒飲み全員が全員14代を所望しているくらい需要があるわけでもないだろうし、供給量がそもそも少ないのは推測できるけどそんなわけのわからないプレミアムを付加して供給してやろうぼろ儲けだしめしめ、と蔵元だって考えてないはずだ。

すなわち何が起こっているかというと、いきすぎた口コミとマスメディアの過当喧伝が14代を完全なレジェンド化してしまったのではないかと思う。

恐らくこれは新潟淡麗ブームの際にも生じていただろう現象で、久保田や越乃寒梅も90年代バブルの時にレジェンド化され完全なボッタ価格で店頭に並び、頭の中も泡だらけで中身のないバブル世代にありがたがって購入されていたはずだ。

どちらも小売店、というより転売ヤーの犠牲になってただ横流しされるだけの手段になってしまっているのは悲しいことで、酒の管理も知らない素人にちゃらちゃら流され品質が劣化し、「高いのにそうでもないな」とか間違った感想を抱かれ誤解を解く時間も与えられない、ってなんの悲劇なんだろう。

わけわからんプレミアムがついてるくせによくわからん品質で買うくらいならふるさと納税しやがれ。とは言わないけどこの記事。

http://www.yomiuri.co.jp/economy/20161017-OYT1T50019.html?from=ytop_main9

若干商売っ気ありすぎじゃないか?10万??とも思うけど、大きな工業地帯や産業が他地域に比べて少ない東北にとって酒造は貴重な製造業。これくらい色付けていいのかなーとも思う。自分は。

ふるさと納税で渡すほうが、転売ヤーにわけわからんプレミアムつけて売られるより遥かにマシ。きちんと品質を保証できるのであれば。

ただまあ、あまりに商売に走り過ぎるのも寄附と感謝の品のやり取り、という関係から、ただの貨幣と現物の物々交換、ってなっちゃいそうでなんだかな。