さけ、時々、めし

日本酒、音楽、人文科学ラヴァーズ

越の国から淡々と。 ―酒の国にいがたの日の思い出―

10月1日が何の日かと問われて、「酒の日です。」って答える人は結構染まってるな、って思う。

そもそもなぜ10月1日が酒の日になったか。ルーツは色々あるようで、寒い時期にしか基本酒を醸すのが難しかった昔は酒造りの開始が10月からだったからその名残だ、とか豊穣の秋を祝ってのことだ、とか細かいことはよくわからない。いずれにせよ自然の大いなる実りなしに酒のないことを自覚しているからこそ酒の日と定めたのだろうけど、酒と自然のコネクション、そのことを忘れずにやってこうぜダーリン、君を永遠に思い続けるよ。って自然や先人達のことを畏怖し思いやってるのがいかにもいい感じだなあと思う。

斯様のようなノリで10月1日=日本清酒、って等式が成立している以上、10月1日はやはり清酒を絡めた祭事をやりたいよね、っていうのが人情、ってもので、各地や居酒屋で日本酒フェア、とかを行っている。飲んでいる。幸せそうに、皆。

そんな、みんなけっこう穏やかに清酒を楽しんで季節的な色の強い感じのカルチャーが王道の中、我が祖国新潟は昨年2015年から10月1日を「酒の国にいがたの日」と制定する。って云わば清酒に関して独立宣言みたいな感じじゃね?おいおい随分とタカ派なことをするなあと驚くと同時に独自色を孕むその可能性を見出して実行したことに、やるじゃん、って思う。

昨年は当日に乾杯イベントを行い、300人もの人が詰め掛けて会場は物凄いことになったらしく、今年は路上、アーケード街での開催になったんだけど、結構偉い人とかも来るイベントって、だいたいホテルのレセプション会場とか産業振興なんちゃら、みたいな屋内でやるのがセオリー、って感じなのに屋外。アウトサイド!新潟酒造組合のみなさんはロックなことするなあと思い、その義侠心に心を揺さぶられた自分も当日、自分も東京からわざわざ酒を注ぐために馳せ参じた。(*ボランティアには新潟清酒検定金の達人の資格が必要です。)

新潟淡麗倶楽部(新潟県酒造組合):新潟清酒産地呼称協会

上、中、下越とブースが三つに分かれていて、自分は下越の担当だったのでそこの酒の味を見て、杯を差し出すゲスト達に愛情分並々注いでやったぜ。

最近の日本酒トレンド、みたいなやつで取り上げられるのが、「フレッシュ・フルーティー」とか「芳醇甘口」とか「きもと山廃」みたいなどちらかというと味が濃くてボディ感の強いやつで、こじゃれた居酒屋に行くとそういうのばっかり置いてることに個人的に少し辟易していたのと、そういうトレンドに影響を受けた人が、「上にあげたようなタイプ以外はクソだ!」って誤解して味がライトめなタイプの多い下越の酒を避けてきたら嫌だなー、って警戒してたんだけど、実際は全くの杞憂でした。むしろ、「とにかく辛いやつ」「辛口は?」って質問ばかりで新潟市民はやっぱりそういうテイストが好きなんだなあと実感した。実感し過ぎて、あんまり冒険しない保守的な感じもそうだよなあとも思った。

結構あっという間に時間が過ぎて、ボランティアの立場としてすごく楽しかった。普段仕事でこんな遣り甲斐感じられたらな、とも思ったがそれは贅沢なことなんだろう。素敵なイベントだった。

次の新潟での大規模なイベントはこれ↓

kenshinsake.com

であって、新潟の中でも普段下越や東京だと見ない銘柄がたくさんあって興味深い。

つーか飲みたい。市内だと売ってないんだよねそもそも。新潟というと酒の陣が有名になっているが、こういう祭りのほうがゆっくりと楽しめるんじゃないかなあと思う。アオーレとかもね。

www.city.nagaoka.niigata.jp

 

近年の酒の陣が混みすぎてマジ乱戦な以上は。

でもいくら乱戦になろうと来年も再来年も自分は決戦の地万代島に駆けつけるし、血の一滴も酒の一滴も流さずこぼさず、名前の如く玲瓏な清酒の源泉に清らかに入水願い。